300-320


だいきらいだよ、ってその声が。小さく紡いだ。
もういっそ全てを失くして置いて逝ってやる。
泥のように崩れ落ちてしまいたいわ
理由も何も無い。ただただ胸が苦しい。
今すぐにでも消えそうな。うたかたにも似た

あなたの目に映る世界は何色ですか?
涙の数だけ強くなれるなんて所詮はただの綺麗事
新聞配達のバイクの音に目を向けた窓の外
  (まだ薄暗い街に、「だまされた」なんて溜息を吐く)
傘を投げ捨ててもきっと、風邪をひくことはできない
懐かしい声がした。随分と久しぶりに聞く声だった。

かさかさと、乾いた唇が音を立てる。鉄分の味がした。
感情さえなければ、戦争だって起こりやしないだろうに。
美しくも哀しい白銀の世界の中で。君の姿を、探した。
沈黙の世界でだって、生きて行くことはできるさ。
もしも三度出会ったら、きっともう二度と忘れられない。

全てが機能しなくなった街で、呼吸を繰り返すだけの毎日。
見えるものも見えなくなって、届いていた夢は跡形も無く消えた。
いつだって色鮮やかなものは、哀しみと隣り合わせで。
開いた空の隙間から漂ってくる、春の香りに似た何か。
長い前髪を掻き上げて全てを見極めようとした。